シースの長さ
@ ロングシース派
当院ではTRAを開始した初期の頃、それまで上腕動脈アプローチに使用していた7cmのシースをそのまま使用していました。しかし、その頃は手技の途中で橈骨動脈スパスムが起き、血管がカテーテルを直接”噛んで”しまいカテーテルが動かなくなることがありました(診断カテにマルチパーパスを使用していたので、カテの前後の動きが大きく、血管をゴシゴシ擦るからスパスムを誘発したのかも)。そして、スパスムを解除するまでは手技が中断されてしまう事が時々起こりました。
その後、橈骨動脈をほぼ全部カバーできる17cmシースにしてからは、たとえ橈骨動脈にスパスムが起こっても、橈骨動脈がシースをガチッと噛んでるだけで中を通るカテーテルの操作には全く影響しません。手技は問題なく終わらせることができ、シースを抜くときの問題のみとなりました。
ロングシースのもう1つの利点は、ロングワイヤーが付属している点です。現在のシネ装置は橈骨動脈穿刺など想定していないので、橈骨動脈付近は透視で見にくくなっています。そこで、ワイヤーを上腕動脈の肩付近まで上げれば、透視で楽に橈骨動脈、上腕動脈の本管を選択したことが確認できます。ワイヤーを肩まで上げたまま17cmシースを挿入するためには、ワイヤー長は70-80cm必要です。
では、シースがもっと長ければどうかという質問がありますが、肘を越えて上腕動脈まで行く必要はありません。上腕動脈径ほどあればスパスムは起きません。もし長すぎると、スパスムが起きた時、その血管を長〜く引いて抜去しなければならなくなり、患者の苦痛が増大します。
以上の理由でシース長は橈骨動脈をほぼカバーできる16〜18cm位が良いと思います。
ただし、16〜18cmというのは、日本人で体格の小さい人でもこれくらいなら上腕動脈まで達しないだろうという目安です。元祖TRIキムニー先生は23cmのシースを使用していますが、“23cmのシースでも橈骨動脈までで、上腕動脈には入っていない”と答えます。日本人と欧米人との体格の差でしょう。
A ショートシース派
現在TRAを実践している施設の中には、5-7cmのショートシースを使用している施設もあるようです。中には”橈骨動脈スパスムは起きたことがない”という施設や、”ロングシースこそスパスムを誘発している”という意見もあります。橈骨動脈スパスムをどう定義するかにもよりますが、私自身はショートシースを使用していません。
ショートシースを使用していらっしゃる施設の先生、”ショートシースの方が良い”という意見を書いて、是非このページに載せて下さい。お願いします。