橈骨の逸話

以下は、東北大学整形外科教授・国分正一先生が書かれた”骨の逸話”からの情報です。

*** 橈骨動脈の”橈”の由来 ***

橈骨のことを日本ではいつから”橈骨”と呼ぶようになったかという由来です。

橈という字には”撓む(たわむ:これは手へんです)”という意味がある。初めは中国清朝の乾隆帝の命令で編纂された”醫宗金鑑”に”臂骨(ひこつ・尺骨)”を補う骨として”輔骨”と記されていたが、杉田玄白らによる”解体新書”では、尺骨はまっすぐであったので”直臂骨”と書かれ、それに対して”撓臂骨(たわんだほね)”と記された。これが明治時代になって”橈骨”となったものと考えられるそうです。

*** Radius(radial)の由来 ***

Radiusのラテン語の原義は尖った棒や杖である。解剖名の解剖名のRadiusはその形状が似ているから付けられた。日本でも大槻玄澤が改訂した”重訂解体新書”には、原義に従った訳語として”挺骨(ていこつ:挺、棒)”と記されている。

Radiusには他にも”車輪の幅(車輪の中心と外を結ぶ放射状のスポーク)”という意味がある。それで、円の半径を表すのにradiusが使われるようになった。またradiusは放射のradiationに発展し、さらに光線、X線のray、X線写真のradiograph、ラジオのradiotelegraphyとなった。

ということは、”Radialist”という単語は齋藤滋先生が創られた造語ではあるが、直訳すれば”放射状に拡がろうとする人たち”ということになるのだろか?